個人投資家がじわりと日本株に回帰してきた。東京証券取引所などが26日発表した2018年度の株式分布状況調査によると、金額ベースでみた保有比率は、個人が17.2%と3年ぶりに上昇し、投資信託は過去最高を更新した。高齢層の保有株は相続などに伴って減少しやすくなっているものの、若年層が年金不安に対応するために小口の資金で日本株を買う動きが強まっているためだ。「ニッポン株式会社」の株主構成には変化の兆しが出ている。
バブル崩壊後の長期的な株価下落が響き、個人の日本株保有比率は低下が続いてきた。1970年度には約38%あったが、90年度には約20%に低下。近年は「高齢の投資家層による相続をにらんだ売りが断続的に出る」(東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリスト)という問題が重なり、2017年度には17%と過去最低を記録した。
だが、18年度は株式数ベースで見ても、個人・その他の保有は7億1500万単元強と10%近く増加した。個人の延べ株主数も5473万人と前年度と比べて343万人増えた。新規株式公開(IPO)や株式分割で増えた分を除いた実質ベースでも、新たに192万人が株式投資を始めたり、買い増したりした。
若年層による「自助努力の資産形成」の流れが少しずつ太くなってきたことが背景にある。
「イデコ(個人型確定拠出年金)って何?」――。楽天証券が25日にインターネット上で開いたセミナーでは、初歩的な質問が相次いだ。動画の視聴者数は前年より3割増えたという。
「将来の備えのために投資を始めた」(IT系企業に勤める27歳男性)、「老後に向けて資金を運用していきたい」(都内在住の男性)。公的年金を巡る不安から株式投資に乗り出す個人は着実に増えている。
実際、インターネット証券では、若年層を中心に「長期の積み立て投資」が増えている。楽天証券では一定額を自動で積み立てる投資サービスの設定件数が19年3月末時点で124万弱と前年同期比で64%増加した。
値上がり益などが一定額まで非課税になる「少額投資非課税制度(NISA)」の利用者数も右肩上がりだ。金融庁によると、NISA口座数は18年末時点で約1150万と4年前より4割増えている。
投信の日本株保有比率は8.4%と1.2ポイント上昇し、4年連続で最高となった。個人の積み立て投資では上場銘柄全体を保有し、分散効果の高い「インデックス投信」に資金を振り向けることが多い。日銀が金融緩和の一環で上場投資信託(ETF)を大規模に購入している影響もある。
海外投資家の動向を示す「外国法人等」の保有比率は減少した。日銀による異次元緩和後の14年度の3割超をピークに一進一退が続き、18年度は29.1%と6年ぶりの低水準になった。
海外勢のなかには短期的な売買に終始するヘッジファンドなども含まれる。個人による日本株回帰の動きは資産形成の支えとなるだけでなく、「国内発の落ち着いたマネー」の流れを強め、株式相場や企業の資金調達を安定させる効果も期待できそうだ。