日本経済新聞 2019/02/20
少額投資非課税制度(NISA)を利用する投資家の約2割に上る231万口座が本来提出すべきマイナンバーを提出していない。法律で義務付けているものの、罰則はない努力義務だからだ。未提出者には2018年分から非課税枠を割り当てない措置を始めたが、17年分まで受けた恩恵は続くため、不公平との声も出ている。
マイナンバーは全国民に割り当てられる12桁の番号で、所得情報や納税、保険料の納付実績などを管理するためのもの。政府は15年10月から郵送を始め、16年1月から所得税法などに基づき新規口座開設する場合、投資家が証券会社に提出することを義務付けた。提出しなければ、証券会社が口座を開設しないため新規口座開設者は必ずマイナンバーを提出している。
問題となっているのは既存口座の保有者だ。マイナンバー提出に猶予期間を設け、NISAは17年末に期限を迎えた。未提出者には18年分から非課税枠を割り当てることはなくなったが、NISA口座で17年末までに投資していれば、マイナンバーを提出していなくても非課税の恩恵を受け続けることができる。
18年末時点のNISA口座数は約1142万。未提出者はそのうち20%に当たる約231万口座に上る。
未提出者にはデメリットもある。例えば、14年にNISAを始めた投資家は昨年、非課税の期限を終えた。その時、国が用意しているのが「ロールオーバー」と呼ばれる制度。NISAを続けたい投資家はさらに5年間非課税期間が延長できる。その手続きをする際、マイナンバーを提出していなければ、延長できない仕組みだ。
この手続きをしないと、2014年に利用した非課税枠の運用資産は自動的に一般または特定口座に移される。
もっとも、一般口座に移されても、それまで得た利益に対する非課税恩恵は剥奪されない。投資した100万円が150万円に値上がりした場合、50万円の利益は新たに課税されない。マイナンバーを提出しなくても恩恵を受けられる不公平な制度になっている。
本来なら、2018年末が提出期限だった証券口座は半数程度が未提出で、義務付けを強行すれば膨大な数の口座が違反となるため、政府は期限を21年末まで3年間、延長した。マイナンバーの登録義務付けは今後、銀行の預金口座にも広げられる予定だ。NISA口座のように移行時に生まれた不公平がそのまま残れば、そもそもマイナンバーを提出する意義すらあやふやになる。金融機関による普及促進策では限界が訪れているとも言える。
>>>
ネット証券比較ランキング