日本経済新聞 2018/9/27
個人投資家が少額投資非課税制度(NISA)で保有する投資信託などを翌年の非課税枠に移管するロールオーバーを気にかけ始めている。2014年1月にスタートしたNISAは5年目の今年の年末、初めて非課税期間の満了を迎える。
各金融機関で14年に投資した投信を19年の非課税枠に移すロールオーバーの手続きが始まっており、定められた期限までに手続きしないとロールオーバーできない。含み損を抱えた状態で課税口座に移すと、制度上のデメリットを被る可能性もあるので注意が必要だ。
NISAは少額から投資を行う個人投資家のための課税優遇制度。23年まで毎年120万円(15年までは100万円)の非課税枠が設定される。投信を買った場合、売却時の譲渡益と普通分配金が最長5年間非課税になる。今年3月末時点のNISA口座の数は1100万口座を超えている。
非課税期間満了時の選択肢には利益確定売り以外に、非課税枠への移管(ロールオーバー)や課税口座への払い出しがある。引き続き非課税メリットを享受したい場合、14年に購入した投信を19年の非課税枠にロールオーバーすることで非課税期間を5年間(23年まで)延長できる。その場合、18年12月の最終営業日の時価が19年の非課税枠の新たな取得価格に置き換わる。
昨年の制度改正でロールオーバーの上限額も撤廃された。改正前は保有投信の値上がりで非課税枠の120万円を超えた金額は売却するか課税口座に移す必要があったが、超過分もすべてロールオーバーできるようになった。ただし120万円を超過しているため新規投資はできない。ロールオーバーする際には異なる金融機関のNISA口座に移管できないほか、NISA口座から積み立て型のつみたてNISA口座へロールオーバーできないなど制度上の縛りがある。金融機関にマイナンバーを提出する必要もある。
一方、課税口座に移すと課税額が増えるデメリットを受ける可能性もあるので注意が必要だ。例えば、100万円分購入した投信が課税口座への移行時に50万円に下落していると、新たな取得価格は50万円とみなされる。その後の相場回復により80万円で売却した場合、実際は20万円の損失が出たのに80万円と50万円の差額30万円が課税対象となる。
NISAの非課税期間は5年以上延長できない。ロールオーバーした5年後も含み損を抱えたまま課税口座に払い出される懸念があると、腰を据えてコツコツと投資に取り組めないかもしれない。個人投資家からはNISAの恒久化や、つみたてNISAとの一体化などを求める声も上がっており、さらなる制度改正が求められる。
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