日本経済新聞 2018/3/2

政府は2月16日の閣議で、今後の高齢社会政策の指針となる「高齢社会対策大綱」を決定した。その中で、国民が豊かな老後を過ごすには計画的な資産形成が重要とし、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の普及を図ることを掲げた。さらに、国民につみたてNISAの利用を促すには、まず国家公務員が同制度を活用すべきだとし、財務省や金融庁といった職域で同制度を取り入れる「職場つみたてNISA」の仕組みを使い、国家公務員がつみたてNISAを利用しやすい環境を整えられるよう政府が積極的にサポートするとしている。
大綱では、国民が高齢期にゆとりのある生活をするためには「計画的に資産形成を進めることが重要」と訴えている。国民の資産形成の手段として、つみたてNISAのほか、個人型確定拠出年金(iDeCo)などの私的年金制度、中小企業向けの退職金制度である中小企業退職金共済も挙げ、国民の資産形成を促進する考えだ。
国家公務員向けに職場つみたてNISAの導入を支援するのは、「地方公共団体や企業における取り組みを促していく」ことが狙いだ。個人にとって身近な存在である職場を活用して国民が資産形成を始めやすくする考えで、国家公務員への浸透を呼び水として、勤労者層全体への制度の普及・拡大を図る。人事院の資料によれば17年度で国家公務員は約58万4000人、地方公務員は273万9000人いる。
同制度を所管する金融庁は率先して取り組んでおり、同庁は2017年12月に職場つみたてNISAを導入。2月26日には職員向けに制度の趣旨などを解説するセミナーを開催した。セミナーでは村井英樹・同庁政務官にあいさつに続き、大和証券が派遣した講師が長期、積み立て、分散投資の有効性を強調。三菱東京UFJ銀行の講師がつみたてNISAとiDeCoの違いなどを説明した。
大綱では、高齢者が生活の不安を払拭し、ゆとりあるものにするために取り崩しを含めて資産を活用できる環境整備も訴えている。具体的には、低所得の高齢世帯向けとして、都道府県の社会福祉協議会が実施する不動産担保型生活資金の利用促進を取り上げた。このほか、高齢者の金融活動を研究する「ファイナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)」の進展を踏まえながら、認知能力の低下など高齢期特有の問題への対応を進めるとした。
同大綱は原則5年ごとに見直している。前回の改定は2012年9月だった。今回は「65歳以上」と年齢で区分している高齢者の定義は「現実的でなくなりつつある」と指摘した。その上で就業面の施策として、意欲がある65歳以上の人が働ける環境づくりの支援やテレワーク(在宅勤務)の普及、公的年金を70歳以降でも受け取れるようにする仕組みの導入などを盛り込んだ。

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