日本経済新聞 2017/8/1
来年から始まる積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)。年間40万円を上限に20年間非課税で運用できる。
対象となる投資信託は、毎月分配型でなく低コストであるなど、長期の資産形成に適した商品に厳しく絞り込まれ、販売金融機関がやる気を出さないとの懸念も聞かれていた。金融庁は26日、野村証券、大和証券、SBI証券、楽天証券、ゆうちょ銀行、三井住友銀行など8つの販売金融機関と個人投資家約60人を集め、討論会を開いた。
各社の発言は意外に前向き。「トップもつみたてNISAの重要性を様々な局面で発信中で、全社を挙げて積極的に取り組む。取り扱い投信の本数などは選定中だ」(野村)、「業界でトップになるよう努める。信託報酬の低い品ぞろえを展開する」(大和)、「間違いなく大きな力になる制度。わかりやすい積み立て解説本も作りたい」(三井住友)などの発言が相次いだ。
SBIは「各資産クラスの最低信託報酬のものなどを中心に、認められる投信はすべて取り扱う。私見だが(口座開設が始まる)10月1日ではそれほど多くなくても、年明けにはおそらく100本以上になるのではないか」、楽天も「すべて取り扱う。個人型確定拠出年金と組み合わせて税制優遇を受けながら資産形成してもらう」と表明した。
具体策も垣間見えた。大和は上場投資信託(ETF)も「(個別株の積立制度である)『るいとう』の仕組みで取り扱うように準備中」と表明。SBIは「毎月だけでなく毎日積み立てもできるようにしたい」という。楽天は「購入後、残高や成績がどうなっているか、継続してわかりやすくチェックできるような仕組みを作りたい」とした。
もちろん金融庁という場所だけに、各社の声は割り引いて考える必要はある。しかし投信販売の主な顧客が高齢層に偏っている中、つみたてNISAを若い資産形成層の取り込みの契機にしたいという気持ちも伝わる内容だった。
やや気になったのは、各社からほぼ同時に聞こえた「つみたてNISAだけでは採算が悪くても、他の幅広い取引にもつなげることで長期で収益性を確保したい」との声。もちろん必要な商品ならいいが、この日も個人から「望んでいない高い手数料の商品を対面型金融機関で勧誘された」と姿勢を問う声も出ていた。つみたてNISAを契機に別途高い手数料の保険や投信を勧誘されても、不必要なら断る自制心が当然、大切だ。
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