日本経済新聞 2017/7/1
「来年以降もNISA口座を継続して利用するには、マイナンバーを提示していただく必要があります」。
最近、銀行や証券会社が相次いでこんな注意喚起のお知らせをサイト上に掲載しています。マイナンバー提示の要請は寝耳に水だと感じるNISA(少額投資非課税制度)利用者は多いはずです。
口座の継続利用に必要な追加手続きについて解説していきます。
NISAは非課税で投資信託や株式に投資できる仕組みです。毎年120万円(元本)を上限に新規の買い付けができ、分配金や配当金、売却益を得ても5年間(非課税期間)は課税されません。NISA口座数は信用金庫や信用組合なども合わせ2016年末で1061万に上ります。
制度が始まったのは14年1月です。口座を開いて投資を始めた人も多いでしょう。14年に買い付けた分は来年(18年)末まで、15年の購入分は再来年(19年)末まで、非課税の扱いが続きます。
制度開始からまだ3年半です。いち早く投資を始めた人ですらまだ1回も非課税期間を終えていません。そんな時期になぜ、追加の手続きが必要だというのでしょうか。
まず確認したいのはマイナンバーの提示は法律上の義務だということです。NISAでは当初から、数年ごとに本人確認などの目的で更新手続きを必要とする設計になっていました。
最初の更新期は、制度開始から4年後の17年末と定められ、確認資料として住民票を想定していました。
16年にマイナンバー制度が導入され、事務手続きは軽減される方向になりました。しかし利用者への周知がこれまで十分ではなく、番号提示はさほど進んでいません。
口座を開設した時期が16年1月以降という人は、その際に金融機関に提示させられたはずなので、いま改めて通知する必要はありません。
問題は14〜15年に口座を開いた人です。来年1月以降も買い付けを続けるには、今年9月末までにマイナンバーを知らせる必要があります。その方法は金融機関によりますが、通知カードのコピーを郵送したり、画像ファイルを作成して送信したりします。
期限に間に合わないと10月以降、もっと面倒な手続きを迫られます。マイナンバーに加えて「非課税適用確認書の交付申請書」を提出します。
「口座を改めて利用できるようになるまで数週間ほどかかる可能性がある」と野村総合研究所の梅屋真一郎・制度戦略研究室長は指摘します。今年末に近づくほど、「新年当初の購入に間に合わなくなり、投資時機を逸する恐れがある」ともいいます。
手続きを何もせずに放置した場合、新規購入はできず、年間120万円の非課税枠が無駄になります。投信で分配金の再投資を指定している場合は課税口座での取引となる例もありえます。
ただし、NISA口座内ですでに保有する資産については、来年以降も、非課税期間が終わるまではもちろん課税はされず、売却もできます。ちなみに、NISA以外の有価証券取引口座についてもマイナンバーの提示は義務ですが、猶予措置により18年末までに提示すれば済みます。
>>>
ネット証券比較ランキング