ニーサの利用上限額を引き上げることは必要
ニーサの使い勝手の悪さは、スタートする前からマーケット関係者の間で指摘されていました。いったん売ったら再投資できないとなると、最初に買った銘柄がタイミング悪く値下がりしてしまった場合、塩漬けのまま保有し続けることになり、一般的な株式投資のように銘柄を乗り換えて挽回することはできません。
いや、正確には乗り換えは可能ですけれど、この制度の一番の売りである税金がゼロになる権利を放棄することになります。
株式市場の需給関係でみると、上昇相場においては売りが出なくなるため、プラス要因になりますが、相場が低迷した場合、逆に資金が固定されてしまう要因になり、マーケットの活性化につながりません。
他方、1年間に100万円の枠というのはどうでしょうか。リスクを積極的に取るという点を考慮すると、年間の上限額が100万円というのは少ないと言えます。
こうした投資家の優遇税制が議論される場合、必ずと言っていいほど出てくるのが「金持ち優遇」という批判です。それゆえに、上限額の引き上げに反対する声もあるのですが、100万円という上限額、5年間累計で500万円という金額はその批判にあたりません。
日銀情報サービス局に事務局を設置している金融広報中央委員会がまとめた「平成25年(2013年)家計の金融行動に関する世論調査」によると、家計が保有する金融資産は1世帯当たり平均1,101万円だったとか。ニーサの上限額はその10分の1にも満たないのです。
この点を考慮すれば、現行より2倍〜3倍に引き上げても金持ち優遇策とはなり得ないでしょう。
上限額に関しては、少しでも税源を確保しようとする財務省の意向が強く働いているとみることができます。2013年末まで実施されていた証券優遇税制の廃止の議論も、それが持ち上がるたびに、財務省の影がチラホラとみえたものでした。
ですが、ニーサは少額投資を行う個人を単に優遇させるだけではありません。戦後この方、日本の金融市場は間接金融が主流で、企業に直接投資して経済全体を発展させようとする意識が低かったように思えます。経済をより活性化させるためには、直接金融を盛んにすることが重要であることは論を待ちません。
間接金融から直接金融へ資金の移動を促し、景気の向上に必要な資金の流れを活発化させ、ようやく脱却の兆しがみえ始めたデフレ経済を完全に終わらせるためにも、株式マーケットに直接的な資金を呼び込む環境づくりをすることが求められるでしょう。
そのためにも、まずはニーサの利用上限額を引き上げることは必要であり、制度を改善することが、我が国の株式市場を活性化させるだけではなく、日本経済を成長させる要因にもなりうるのです。
<続く>
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